実銃レビュー/ベレッタ92FS ブリガディア

ハワイの銃事情

mark_one_hawaii_5

7月にハワイに屋外射撃ツアーをオープンさせたが、観光客の多いリゾートの割には、現地での認知度はまだまだ低く、太平洋の真ん中でのんびりと過ごしている。この場を借りて射的屋による実銃の魅力を何回かに分けて紹介してみたいと思う。

mark_one_92fs_1a

まず、ハワイ州の銃事情であるが、全米でも最も厳しいルールに沿ってはいるものの、米国本土で所持可能な銃(クラス3を除く)は全て合法的にも所持は可能である。しかし、カリフォルニア州と同様にハンドガンの所持にはライセンスが必要で、これには実射を含む1日の講習を受けなければならない。更に、購入時から14日間のウエイティング・ピリオド(waiting period)が必要である。
ハンドガンのマガジンのキャパシティは最高10発までと2004年にAWB(Assault Weapons Ban)が終了しても、ハワイ州だけは継続中である。勿論、セミ・オート・ライフルならば、M4やAK47等の30連マガジンの装着も認められている。

mark_one_range_3

ただ、離島の宿命で、実包の値段が本土の倍近くするので、現地のシューター達がレンジでリロード弾を使用しているのよく見かける。

ハワイ州ではもともと銃による死亡数が全米50州のうちに一番低く(人口10万に対し僅か2.7人)、これは、島民の穏やかな性格や狭い社会が大きく関与している様で、ある意味、ホノルル市内は観光客にとっても、安心して過ごせる街と言える。

何故92FSブリガディア?

本拠地のラスベガスより持ち込んだ1丁がベレッタ92FSブリガディアである。性能は後述するとして、何故、米軍の採用している名銃M9A1ではなく、今更、92FSなのか?と突っ込みが入りそうであるが、自らの30万発に及ぶレンジの92FS系の発射データから、強化型のブリガディア・フレームモデルが優れた理由があるからだ。簡単に述べると以下が、M9A1との違いである。

・スライドの強化(36g増)
・ロッキング・ラグの破損率の低さ
・サイトの大型化
・フィンガーチャンネル付きグリップ

特にスライドの強化によるアッパーフレームの重さは、36g増加ながら、見た目も頑強だ。かつて、80年代に起こした92F系スライドの断絶事故は米軍のみならず全米のレンジでも問題になっていたが、ハンマーピンの大型化とスライドの製造工程の見直しで2000年代にはほぼ終息していた。

mark_one_92fs_2

このブリガディア・フレームは当初から強装弾を使用する執行機関向けに作られており、フレームの重量増加でスライドの後退速度に僅かにブレーキが掛かり、92FS系の最大の弱点である、ロッキング・ラグの破損率が少なくなったことは意外に知られていない。今や、ロッキング・ラグも第3世代になり、破損率は減ったが、未だリコイル・スプリングがヘタると壊れやすい弱点パーツには変わりない。

ブリガディアのロアー・フレームにレールが付いていないが、日中のターゲット射撃には特に必要ない。また、大型のサイトは前後とも専門ツールで微調整が可能である。フィンガーチャンネル付のグリップもM9A1よりホールドしやすい。元々92FS系は完成度が高いのでノーマルでも充分使えるが、マガジン・リリース・ボタンのみは大型のものに付け替えた。実際、指が長い人でなければノーマルの実銃92FSのマガジン・リリース・ボタンを右手親指だけで押せる人は少ない。機会があれば海外のレンジで試してみたら良いと思う。

92FS系最高峰のカスタムであるWilson Combat 92G Brigadier Tactical もこれをベースに改良しているので正に、ブリガディアは我々の様に50,000発前後を短時間で撃つヘビー・ユーザー向けの強化型92FSと言える。

mark_one_92fs_7
M9A1(左)に比べブリガディア(右)スライドの厚みが分かる。

mark_one_92fs_8
ブリガディアのサイト(左)も大型化している。

mark_one_92fs_9
フィンガーチャンネル付(左)のグリップもホールド感が抜群だ。

mark_one_92fs_10
最近の92FS系のリコイルスプリング・ガイドも樹脂製だ。スプリングの後ろに見えるのが、弱点のロッキング・ラグ。

mark_one_92fs_11
大型のマガジンリリース・ボタンに交換する。M9A3では既に標準装備されていた。

mark_one_92fs_12
ハワイ州では10連マガジン。

mark_one_92fs_15
25ydからの結果。6時方向に着弾したが・・・。下に集まった4発の集弾は約3inch(75mm)程度。

実銃92FS射撃のコツ

では、今まで問題のあった92FS系を何故、射的屋は使うのか?それは、知名度もあるが、92FSが「当たる」銃であるからに他ならない。米軍がトライアルを行った1985年当時、92FSはP226を抑えて栄光の正式軍用銃となった。92FSの納入価格は安く、何より、当時のP226の精度では到底92FS系に勝ち目は無かった。歴代の採用銃を見ても米軍は、強度と精度の高い汎用銃を優先している経緯があり、このトライアルも例外では無かったと思う。

話は横道へ逸れたが、では、我々、射的屋がどの程度で「当たる銃」かと聞かれれば、ズバリ、箱出し状態で25yd(23m)で大体2inch(50mm)以下に集弾する銃だ。一般の汎用銃では100mmを切れれば充分とされる。

それでは、実銃射撃の経験が無い人に、実銃92FSを上級者並みに撃つコツを教えたい。まず、初めて海外で実弾を撃つ場合は、いきなり、9mmの実包を入れて撃たずに、現地のインストラクターに頼んで、ドライ・ファイア(空撃ち)を何度かさせてもらったら良い。特にトリガーをゆっくり引いてトリガー・バーがシアと触れる感覚を掴んで頂きたい。この際に同時にファイアリングピン・キャッチが上部フレーム上にせり上がるのが見えると後は、トリガーを絞るだけだ。

しかし、殆どの人は、ここでトリガーの感覚だけを見ようと「カチカチ・・・」無造作にトリガーを引くが、常に92FSのフロント・サイトを注視してハンマーが落ちた時に銃がどう動くかを確認した方が良い。つまり、実弾はその動いた方へ向かいマッハ1.05で超えて飛んで行くからだ。

mark_one_92fs_13

初めて撃つ人は、轟音と共に銃は目の前で跳ね上がり、エンプティ・ケースも飛び出すので、「ウワッ!」と驚くかも知れない。そのショックで90%の人は、次弾(2発目)以降は、最初にドライファイアをしたことを忘れて、フリンチング(ガク引き)で6時方向(下方向)を撃ってしまう。酷い人はターゲットとの間の地面を撃つ人もいる位だ。実銃射撃とは、何よりも自分のメンタルをコントロールすることが重要であることを覚えておいて欲しい。

mark_one_92fs_14

92FSとインストラクター

上記した通り、我々が92FS射撃の指導をする際には、発射寸前にファイアリングピン・キャッチが持ち上がるのが見えるので、シューターがキチンとトリガー・コントロールが出来ているかが一目両全というわけだ。つまり、メカニカルな点からも92FSは最も指導に適した銃なのだ。25yd(23m)で撃って、確実に12インチ(300mm)以内に纏まる様になれば、実銃射撃も面白くなる。

これを、実現するのはやはり、シューター本人の理解も必要であるが、現地では適切な指導ができるインストラクターも付かなければならない。

この場を借りて色々と射的屋目線で92FS編を書いてみたが、実銃の面白さを知ることでまた、他の銃やライフルにも挑戦したくなるし、安全にマナーを守って撃てば、射撃もスポーツと同じ感覚で楽しめると思う。この夏も、どんどん、海外で実銃射撃にチャレンジしてほしい。

次回は実銃1911A1について語ります。

キャプテン中井 (きゃぷてん なかい)
元陸上自衛官 レンジャー資格保有。NRAインストラクター、レンジ・セフティ・オフィサー、渡米歴26年。
著書:Gun Professional「撃たずに語るな」、「世界の銃 最強ランキング 」学研