実銃レビュー/Colt M4 Carbine

観光客に人気のライフル

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我々、射的屋業界でも人気ライフルは年代により変化している。90年代はAR15カービンであったが、何と言っても2000年代以降は、M4カービンの人気はダントツだ。これは、M4が米軍が現役で制式採用しているから性能が折り紙付きであることも大きいが、最近では、オンライン・ゲームのユーザーが人気を後押ししていると言っても過言では無い。もっとも、ゲームのデータ・ベースにも実銃の性能を反映しているだろうから、人気が上がるのも必然であろう。2010年以降はM4とHK416が人気を二分している。

それでは、実際のハワイのレンジで地元で人気のライフルは何だろう?それも、殆どがAR15(M4)をベースにしたカスタムである。実際、レンジで出会うAR15(M4)は10人10色で、同じ形をした銃は皆無と言ってよい。 つまり、M4で米軍が目指したアクセサリー・デバイス・システムは今や無限のバリエーションを可能にしたので、これが米国のシューターの人気を後押ししていると言える。

逆にHK416は米国でも高価な上、カスタムパーツが流通していないことから、人気に火が付かないと言っても良いかもしれない。
今や、M4系のアフターマーケット・パーツは米国のメーカーがしのぎを削り、一見、成熟した様にも見えるが日進月歩である。2016年の米国のAR15(M4)ユーザーは一説には400万と言われ、既にNATO軍を凌ぐ巨大マーケットであるが、この先、2016年の米国選挙前に更に増える可能性もある。円高を追い風に、日本の製造業でさえ充分、米国に売り込むチャンスがあるだろう。

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マークワンで使用するM4 ライト・カスタム。詳細は、こちらを参照頂きたい。

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MK12(上)ともベースはほぼ同じである。

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主要パーツだけは全て耐久性の高い物へ交換。

M4カービンの魅力と未来

M4の魅力
・300mまでは2.5MOA位をキープできる。
・銃が軽いのでハンドルし易い。
・M193,M855 のリコイルの軽さ。
・実包がマガジンへ装弾し易い。
・最良の位置にあるマグリリースとセレクター・レバー(マニュアル・セフティ)
・ガスチューブ内はほぼ、2万発ノーメンテナンスでも作動。
・豊富なカスタムパーツ群。

M4の問題点

・300mを超えると精度が下がる。
・ボルトが汚れやすく、耐久性が弱い。
・ストックのガタツキ(ノーマル)
・ハンマーピンの破損(フル・オート射撃時)
・チャージング・ハンドルの持ち手が短い。
・アルミのオリジナルマガジンのリップの耐久性が弱い。
・パイボット射撃時に30連マガジンが邪魔。
等が挙げられる。

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ガス・チューブ内は2万発を超えてもクリーニングしなくとも良い。

勿論、何を基準にしているかによって違ってくるが、レンジ撃って楽しむなら100ydで2.5MOA(約75㎜)程度に集弾する銃でなくては面白く無い。ライフルとして当たるか否かの境界線は、この辺りであると思う。良く撃たずにAKを名銃と絶賛する人は多いが、100~500mで50発ほど撃てば、その性能がはっきり分かる。例えバトル・フィールドでAKを持っていても200m以上の距離でM4と撃ちあえば風穴を作られるのがオチだ・・・。

前に挙げた通り、M4にも弱点がある。それは、心臓部のボルトの強度が足りないことだ。だから、値が張ってもタングステンカーバイドやチタン製に交換するしかない。更に、ボルトやボルト・キャリアの定期的なクリーニングも欠かせない。ベトナム戦争時代のジャムの問題はパウダーの除湿剤の影響もあるが、明らかに兵士のクリーニング不足が考えられる。メカに熟知していれば、ボルトを外す度にブラシでゴシゴシ磨かなくとも、ペーパー・タオル1枚あれば簡易クリーニングが出来るのだ。

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もっとも、M4の強化版とも言えるHK416系はガス・ピストンを採用しているので、M4に代表されるリュングマン系の作動の不安も無用であるが、システム自体は古いH&K G36系を踏襲しているので、精度にはさほど貢献できないジレンマを抱える。また、特殊作戦用のライフルとしては、些かフロント・ヘビーで重過ぎだ。

M4を入れ替える案も米軍の一部では取り上げられているが、FN SCARも同様に次世代のライフルは優秀であるが、総入れ替えする程、M4が悪いわけでは無い。海兵隊のM1911A1ベースのMUEピストルの様に、M4ベースに改造した方が安上りで高性能のライフルを組み上げることが出来るからだ。実際に1MOAレベルを出すMK12やSAM-R等を見ればよくわかる。今後も5.56mm(M193、M855)の規格が続く限り、M4系は21世紀の米軍に主力ライフルであり続くことだろう。

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ダブル・フィード・マガジンのよくある勘違いの例。正しくは上から押し込むのだ。

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装弾時にチャージング・ハンドルを使おうとする人は多いが、閉鎖不良やミスファイアを出しやすいので、止めた方が良い。

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初弾発射時にはボルトがホールド・オープンしているはずなので、ボルト・キャッチを押すのが正解だ。

M4実射とコツ

まず、実銃M4の射撃の前に、多くの人が勘違いしている事例を挙げるので、海外でM4を撃つ人は、参考にご覧頂きたい。先に、M4の特性にはマガジンへの装弾が簡単であることを挙げたが、マガジンには「ダブル・カラム」と「ダブル・フィード」タイプがあることを知る必要がある。ハンドガン系が、前者で装弾は前からしか行えないが、M4を含む後者のマガジンには真上から入れるほうが楽に早く装弾できることを知って欲しい。

更に、装弾済のマガジンを本体に挿した後に、多くの人がチャージング・ハンドルを使おうとするが、ボルト・キャッチを押すのが正しい装弾方法だ。何故なら、下手にチャージング・ハンドㇽを使うと、ボルトの前進を指が阻害して、不完全閉鎖を起こして、そのまま撃つと、ミス・ファイアを発生させる。勿論、右側にある、フォアード・アシストを使えば閉鎖出来るが、わざわざ、装弾時に2度手間をすることは無い。

チャージング・ハンドルを使うのは、装填済のM4から弾をクリア(抜く)時と、実戦等で大きな音を出せない時の装填等に限定される。ボルト・キャッチの役目は最終弾発射後にホールド・オープンさせるだけで無く、装弾時にストック内のアクション・スプリングを利用してボルトを前進させる為にあるのだ。

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レンジで100mは遠くに見えるが、M4なら誰が撃ってもよく当たる。

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射撃のスタイルは、いろいろあるので、現地で習ってほしい。

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M4は3つのマス内(=約75mm内)に入れば合格だ。

 

勿論、この辺は、現地でインストラクターが指導すると思うが、撃つだけで無く、銃のメカと本当の
役割を知ったほうが良い。それと、M4の構え方も、いろいろなスタイルがあるが、多くはベンチ(机)で撃つ場合に、姿勢が下がり過ぎている人が多いので前傾姿勢をキープ頂きたい。

ノーマルのM4のトリガーは、遊びの無い3kg前後のワン・ステージなので、握力に自信の無い人は注意深く絞った方が良いだろう。ハンマーの根元にジワリと力が掛かる感覚が分かるはずだ。
ライフル射撃時に、ウイーク・ハンド(利き手と逆)に力を入れ過ぎの人が多いが、そこまで力を入れる必要もない。

ベンチから撃って100mで2.5MOA(75mm)前後に収めたら、まず合格なのでそれを目標にして頂きたい。ライフルの射撃はハンドガンとは別世界の精度を出すので、実銃の性能を体験できる、素晴らしい機会になるだろう。

次回は実銃グロック17について語ります。

キャプテン中井(きゃぷてんなかい)
元陸上自衛官 レンジャー資格保有。NRAインストラクター、レンジ・セフティ・オフィサー、渡米歴26年。
著書:GunProfessional「撃たずに語るな」、「世界の銃最強ランキング 」学研