実銃レビュー/Glock17-Gen4

ハワイ陸軍博物館

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ワイキキにあるハワイ陸軍博物館(入場無料)は銃器を含む展示物も多いのでお勧め! 旧軍の九五式軽戦車(奥)と、米軍のM24戦車(手前)。

射撃ツアーが消えた1995年

海外での射撃ツアーはバブルの終焉である80年代後半にピークを迎えていた。ここでの「射撃ツアー」の意味は、日本の銃愛好家達による団体ツアーを指すが、90年代前半前までは、銃器専門誌を主体に射撃中心の旅行が宣伝されていて、多くの愛好家が海外に出て射撃を楽しんでいた時代があった。

しかし、1995年のオウム教団のテロ事件を境に状況は一変する。教団がロシアでの射撃ツアーで軍事訓練していた事実が判明したこともあり、それ以後は、日本の公安が海外への射撃を斡旋するツアーに自粛を求めたのだ。つまり、射撃ツアーが国内のテロ活動を助長する恐れがあると初めて判断されたことになる。

勿論、射撃ツアーは消えても、個人なら海外に出ても射撃が出来るし、現地でもスポーツとして合法的に楽しむことが出来る。しかし、近年、欧米を中心にイスラム過激派のテロが多発している現状を見ると、海外の我々、射的屋も今一度、目的意識を明確にする必要に迫られている。

日本から来場する観光客に優秀なインストラクターや珍しい銃を集めて、夢やスリルを与えることは大切であるが、一歩間違えれば、あの21年前の事件になることを忘れてはならない。

第4世代目は最強のハンドガン

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グロック17 第3世代(左)と第4世代(右)

今回はグロック17について語るが、この銃についても多くを語る必要はないかと思うので、8万発程撃った上での射的屋目線で所管を並べてみた。

■グロック17の魅力
・ポリマーフレームを使った本体とマガジンの軽量化(全世代)
・銃身の位置が低いので速射時にコントロールし易い。(全世代)
・突起やハンマーが無いので、ホルスターからのドローに適している。(全世代)
・6時照準で50ydまでカバーできる。(第3・4世代)
・摂氏45度のベガスで連続射撃時でもグラブ無しで保持可能。(全世代)
・トリガー・セフティのみのシンプル設計。(全世代)

■グロック17の問題点
・使えない装弾がある。(第1・2世代)
・個体による精度差が大きい(第1・2世代)
・リアサイトが外れやすい。(第1・2世代)
・マガジン・リリースボタンの位置が遠い(第1・2・3世代)
・チャンバー・インジケーターが無い。(全世代)
・ハンマー式に比べトリガーの切れが悪い。(全世代)

オウム事件と同じ21年前、銃砲店で働いていた時に、始めてグロックを撃った時の衝撃は今も忘れられない。特に一番インパクトを受けたのは、精度でも装弾数でも操作性でも無く、ポリマー(樹脂製)の銃の「軽さ」であった。また、銃の軽さは、9×19mm発射時のリコイルの影響を受け易くなるが、ロアーのポリマー・フレームに対して銃身の位置が92FSやP226系より低く設定されているので、リコイルをコントロールし易いのだ。

また、スタンダードな軍用ハンドガンはセンター照準が殆どであるが、グロック系は6時照準を基本にしているので、小さなターゲットを撃つ時にも対応できる。以前、92FSとの比較をしたので、コチラのブログを参考にご覧頂きたい。ブログに挙げた様に、グロック系の樹脂のフレームは体にフィットし易く、キャリー時にも抜群に抜き易やすいことが、法執行機関に支持されている最大の理由である。

また、第4世代では遂にバックストラップが交換式になり、最大の課題であったマガジン・リリースも大型化された。ポリマー系の銃はH&K USP系をはじめM&P、XDM等が有名であるが、第4世代にして、成熟したグロックは再び最優秀のハンドガンに返り咲いたと言える。

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第4世代(左)になってグロックもバックストラップが交換式になった。

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表面加工も滑り止め対策を施された。(左)第4世代のバック・ストラップはベースであるスモールサイズにラージサイズを被せるスタイルだ。
写真は何もついていない状態だが、日本人の手には、これが一番フィットする。

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課題であったマグ・リリース(右)もようやく大型化した。

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トレンドのバッファー・スプリング(下)も追加されている。

グロックの実射とコツ

折角、海外で実射を体験するのなら、自分の撃つ銃のマガジンへの装弾を試してみたい方は多いと思う。レンジによってはインストラクターに頼めばできる場合もあるが、グロックに限らず、あまりお勧め出来ない理由がいくつかある。

・ダブル・カラムへのマガジンに弾を17発入れるのに相当の指の力が必要になる。
・装弾で指の力を消耗して、実射時の際にウイークハンド側のグリップが甘くなる。
・マガジンや実包を地面に落として砂を付けたまま、撃つ可能性もある。

だから、どうしてもマガジンへの装弾をしたい場合は、5発位までして、後は、インストラクターに頼めば良い。上に挙げた様に、実射まで指(グリップ)の力を温存して欲しいのが我々の心情なのだ。また、フルに17発を入れると、撃ち切る時間が掛かり腕力を消耗するので、10発程度の装弾でインターバルをするのがお勧めだ。

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グロックのダブル・カラムマガジンへの装弾は強靭な指の力が要る。

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グロックの銃身は低い位置にあるので、リコイルによる回転を抑え易いデザインだ。

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50yd先のシルエットを撃つ。コツさえ掴めば、面白いように当たる。

また、グロックの実射前のドライ・ファイヤの際にはスライドを引き切らなくとも、ほんの1cm程引けばストライカーがロックされることも覚えた方が良い。トリガーをセフティごとジワリと絞るとストライカーが「パツンッ」と落ちる音がする。これは、ハンマー式のハンドガンとは明らかに違うので、慣れが必要だ。。

グロック系の性能を引き出すのは、この安定したトリガープルとウイークハンドのグリップ力が決め手になる。セミ・コンパクトのグロック19も人気があるが、グリップ面積が狭いのと銃身線長の関係で僅かに精度が下がるので、25ヤード以上のレンジでグロックを撃つなら、フルサイズのG17やG34が安定しているのでお薦めだ。
92FS系と同じで25ydで300mm以内に集弾させることを目指してほしい。

次回は実銃シグMK25(P226)について語ります。

キャプテン中井(きゃぷてんなかい)
元陸上自衛官 レンジャー資格保有。NRAインストラクター、レンジ・セフティ・オフィサー、渡米歴26年。
著書:GunProfessional「撃たずに語るな」、「世界の銃最強ランキング 」学研