実銃レビュー/RAS47(AK47)

最強の作動性

DSC00208我々、射的屋には銃の作動が命と言っても過言では無い。本場ラスベガスの人気レンジでも、手入れや点検を怠って、作動不良を起こす銃を平気に客に撃たせる場面を見て、苦言を放ったことは数知れない。本場でも所詮、この程度のレベルで運営しているのかと思えば、参加者が気の毒になる・・・。

銃の作動の面で言うと AR(M4)系なら 500 発撃てば、ホルト周辺は相当汚れるので、大体、300~400発でクリーニングするのが相場である。しかし、今回紹介するAK系は大型のガス・ピストン部分で発射ガスの流入が殆ど止まるので、ボルト部分には汚れが少なく、その結果としてAR系に比べて作動性の高さは格段に高くなる傾向にある。

この辺は、HK416やSCARの様なガス・ピストンを持つ非リュングマン系ライフルもAK系と同じ特性を持つが、ガスチューブやピストンの構造が異なるので、メンテナンス性を考慮するとAK系が断然有利である。現在の汎用アサルト・ライフルの中で1000発をクリーニング無しで撃てる意味では、このRAS47やガリル、バルメを含むAK系の独壇場でもある。

mark_one_RAS47-02RAS47(AK47)。口径は7.62×39mm、Nikkon 製の X3 スコープを搭載

mark_one_RAS47-03延長され耐熱効果の高いハンドガードがレンジでは使いやすい

mark_one_RAS47-04当然、グリップもマグプル製

mark_one_RAS47-05ストックは、ホールディング、伸縮が可能

mark_one_RAS47-06弱点のストックと本体は強固に構成された

RAS47(AK47)
口径:7.62×39mm  銃身長:400mm
装弾数:30+1発  全長:977mm/910mm/736mm
重量:3,900g  作動方式:ガス(ピストン)・オペレーション
100m平均グループ:125mm(スコープ装着時)

RAS47の魅力
・2 ステージのカスタム・トリガーが搭載されている。
・マニュアル・セフティが右手の人差し指で操作できる。(ホールド・オープン可)
・緩まないマグプル製ズコフ・ストック(サイド・ホールド&伸縮可)の装備。
・軽量化されたボルトと大型のマグ・リリース
・メンテなしで 1000発を連続発射できる作動性。

RAS47の問題点
・マニュアル・セフティの切れ(操作性)が悪い。
・200mを超えるとグループが低下する。
・スコープを付けなければ、チークが高すぎて照準しづらい。
・ズコフ・ストック(デフォルトの長さ)が旧タイプに合わせているので短い。
・依然、左右のウインテージ調整には専門工具が必要。等が挙げられる。

Magpul とコラボされたAKの最終完成系

1949年に旧ソビエトの故ミハイル・カラシニコフ氏により開発されたAKは80年代に中国やエジプトから米国に輸入された。冷戦時代の秘密のベールに包まれていたAKも蓋を開ければ、大きな欠陥を持っていた。それは、象徴的とも言える木製のハンドガードとストックである。

殆どのフルサイズAKは木ねじでレシーバー後部とストックを固定していることがあるので、当然、射撃数が増えれば緩みやすくなるからだ。旧型のSKSにはこの様なトラブルは皆無だったので、突撃銃としての設計思想が未だに黎明期であったことが伺える。更に、木製ハンドガードについては、30発も発射すれば、銃身からの熱気で、とてもグラブなしでは保持出来ない問題があった。

AK系の欠陥に気づいたアフターマーケットのメーカーは軽量のポリマー素材のハンドガードやストックを販売していたが、その中でも Magpul社がセンチュリーアームズ社のAKMに取り付けたZhukov (ズコフ)ストックがその決定版と言える。耐熱対策が施され、レシバーに対して取り付けも強固になっているので、ガタつきは皆無となった。しかし、チーク(頬)の取り付け位置が高いので、我々アジア系には、とてもではないが、スコープを付けねば頬が痛くて狙えない。

mark_one_RAS47-07ホールド・オープンが可能なセフティはレンジでは必需品

mark_one_RAS47-08この大型ピストンがAKの真髄

mark_one_RAS47-09肉抜きされ軽量化されたボルト本体

mark_one_RAS47-10AKは主要パーツの少なさが強み

RAS47 vs M4

AK系は質実剛健なアサルト・ライフルであるが、発射毎に掛かる大型ピストンや、7.62×39mmのリコイルにより銃身へのテンションが掛かるので、どうしても精度の低下は避けられない運命にある。
大体、100mでの精度が125mm前後が相場なので、逆算すると、シルエット(人物大)を狙うには200m辺りが限界になる。設計上、ストックが短い上にダスト・カバー上にリアサイトを付けることが出来ない分、銃身線長が犠牲になるので、精密射撃が難しい銃なのだ。

それにも関わらず、予算の少ない第三国でも、未だAKMを採用しているケースが多いは、銃本体と 7.62 × 39mm弾のコストパフォーマンスが高いことが挙げられる。

射撃性能で言えば、200m以上の交戦距離でAR15やM4と勝負すると撃ち負かされるのが目に見えている。サイド・マウントのスコープを搭載すると、グループ(集弾)は 20%程良くなるが、AK系の最高峰、SDV(ドラグノフ狙撃銃)でさえも、フルサイズのAR15同等の性能しか発揮できない現実がある。この辺りは、突撃銃の火力を使い近接戦に持ち込んで勝負を決める旧ワルシャワ条約機構の戦術が伺える。

AK系を名銃と詠う人は多いが、米国のレンジで高精度タクティカル・ライフルを撃つシューターの隣で撃てば、冷ややかな目で見られるのがオチである。そのパフォーマンスを考慮しても真面目に腰を据えて撃つ銃とは言い難いからだ。つまり、AK系は過酷な戦場で撃つ銃であり、平和なレンジで、その真価を見出すことは難しいということになる。mark_one_RAS47-11 当然、ポリマー製のP MAGの方がスムーズに交換できる

mark_one_RAS47-12左から、7.62×39mm、5.45×39mm、5.56×45mm

mark_one_RAS47-13AK47(下)と M4(上)で撃った 3mm 厚鉄板。左から、1 枚目、2 枚目、3枚目。鉄板に対する貫通力はほぼ同等mark_one_RAS47-14近代化されたRAS47はM4に肉薄出来るか?

RAS47の実射とコツ

AK系は作動性が良いので射撃ツアーにも向いているが、銃(レンジ)の指導員は、AKのボルトをホールド・オープン機能を付けて視覚的にチャンバーがクリアできる配慮が必要かと思う。また、AK系は、初弾を装填する際には、セフティが常に、ファイア・ポジションであることも憂慮した方が良いだろう。

実銃の初心者には5.56mmまでは平気で撃てるが、AK系を含む7.62mmになると、相当なリコイルを感じることが多い。特にライト・ユーザーが多いハワイでは、その対処としてAK74タイプの大型のマズル・ブレーキを装着しているので、女性でもリコイル・パット無して、手軽に7.62mmの迫力を体験出来る。マズル・ブレーキは、有効であるが、当然、弾着が下がるので調整が必要になる。

先に述べた理由から、カスタムされたRAS47でも100mを撃つ位が丁度良い。7.62mmの射撃はシューターの体重や体力差に左右されやすい口径でもある。初心者は、どうしても重心を後ろに掛け気味で撃つが、出来るだけ銃を前へ押し、肩付けを決めて射撃後のフォローを忘れずに撃てば、次弾も同じエリア内へ着弾させることが出来る。RAS47のポリマー製のストックと延長ハンドガードが射撃の安定性を出すのも体感できると思う。

基本的にこの手の銃はウインテージが調整できないので、3倍のスコープを搭載してある。トリガーは2ステージにチューンされているので、慎重に撃てば何とか100mm前後のグループが出るし、頑張れば100m先のコインに命中させることも出来る。言葉で説明するよりも M4 と撃ち比べて何か違うのかを、是非、自分で体感頂きたい。

mark_one_RAS47-15基本的なテクニックはどんなライフルでも変わらないmark_one_RAS47-16マズル・ブレーキの効果は高いが、その重量で着弾は下がるmark_one_RAS47-17 50mでは、50mmを切るが、100mでは125mm程度が目標mark_one_RAS47-188月も涼しい風が吹く快適な屋外レンジ