海軍とハワイ
ハワイはビーチ・リゾートのイメージが強いが、ワイキキから車で西へ20分の場所にあるパール・ハーバー(真珠湾)は、あまりにも有名だ。19世紀末から米国の太平洋進出の拠点であり、今も太平洋軍司令部が置かれている。
米海軍基地であるが、一般開放されているので観光客にもお勧めスポットである。我々にはどうしても真珠湾攻撃のイメージが残るので、沈没したアリゾナに敬意を捧げるのも良いが、フォード島に係留されている戦艦ミズーリだけは是非、見て頂きたい。
戦艦大和と同クラスの大鑑巨砲時代の船で、21世紀まで生き残った数少ない戦艦である。太平洋戦争での活躍や、その後の日本政府の降伏調印式に使われたことでも有名である。ミズーリの艦内は殆ど、見ることも出来るし、特に射程40kmを誇る40cm砲の迫力には圧倒されるだろう。
SIG MK25とは
SIG MK25(P226 )
口径:9×19mm(+p+発射可) 銃身長:112mm R/6
装弾数:15+1発 全長:196㎜
重量:845g 作動方式:ショート・リコイル
25mの平均グループ:50mm
海軍マークが雰囲気を出している。スペックはP226と同じはずであるが、この銃には良い意味で期待を裏切られた。
MK25(P226)シリーズは軍用オート中、一番、頑強なメカニズムを持つ。
今回、紹介するMK25は、P226を海軍仕様にして発売されたモデルだ。MK25は実際に海軍のSEALsが採用しているMK24の改良型であるハンドガンとしても有名であるが、MK25とP226 の関係は、M9と92FSとの関係と似ている。特 にMK25には、腐食防止コーティングが施され、特にQRコードや錨のマークがフレームに付いているので、それらしい雰囲気を醸し出している。
更にMK25では旧P226シリーズよりも僅かにグリップ部分がトリミングされているので、マグ・リリース・ボタンやデコッキング・レバーへのアクセスが良くなった。発売当初は、銃業界が得意な虎の威を借る商法と思っていたが、MK25の真の魅力は、SIGのフラッグシップ・モデルとして、完成度と精度を上げてきたことが挙げられる。この辺の理由は後述するとしたい。また、いつもの良し悪しの序列であるが、
MK25の魅力
・9mmオートで最も頑強で耐久性のあるシステムを持つ。
・9×19㎜の124gr.+p+を発射できる。
・25mで50㎜を切る精度。
・ファクトリー・ロードを50,000発以上発射可能。
・デコッキング、マグ・リリースへのアクセスが容易。
MK25の問題点
・115gr.弾や厚いグラブを使用して撃つと、スライド・ストップが掛かり難い。
・ノーマルサイトの場合、弾着が低いので6時照準出来ない。
・デコッキング、スライド・ストップを混同しやすい。
・海水に付けると、トリガー・スプリングの劣化が早い。
・ポリマー系銃に比べてホルスターからの挙動速度が低下する。
等が挙げられる。
強力なMK25のリコイル・スプリングは、強装弾仕様だ。
米軍トライアルへのリベンジ
このMK25は自分にとっては4代目のP226系であったが、今までは、大金を叩いて買っても、ガックリと肩を落とすことが殆どだった。つまり、P226のオーナーなら、80年代の軍用ハンドガンのトライアルの際に、M9に敗れた原因は明白だろう。M9の方が、安く、良く当たるからだ。実際、我々もツアーで年間に数万発を撃っていれば、その違いはすぐに分かる。P226は噂ほど評価される銃ではなかったからだ。
その後、M9は海軍の射撃訓練中にスライド破断の事故を起こしているし、民間のレンジでも数多く同じ問題が報告されている。つまり、海軍が未だにM9を使わずにMK25を使う理由は明確で、耐久性があり、1400fpsを叩き出す9㎜+P+の装弾が発射可能であることに他ならない。しかし、その後もSIGはバリエーションを無駄に増やすだけで、暫くP226にブラッシュアップすることは無かった。
しかし、今回、箱出し状態で25mの精度を見て、何とかM9を上回る性能を見せたことを確認出来た。SIGはP226マルチキャリバーのP250等、売れないシリーズに手を出して紆余曲折をしたが、ようやく原点であるP226の基本性能を見直した様だ。しかし、この世代の銃は軽量化をしない限り、今度、スタンダードになる時代では無いことは確かだ。
MK25の操作系は親指周辺に集中しているので、使い慣れたプロでなければ、操作ミスを起こしやすい。
ベガスでテストした鉄板。MK25を25mから撃って、どちらも50㎜台をキープしている。
50mから撃つと、流石のMK25でも命中率が下がる。
MK25の実射とタクティカル・グラブの話
MK25の実射のコツは基本的に、9㎜系のハンマー式DAオートと同じであるが、プロとアマの違いをモロに出しやすい銃でもある。それは、MK25のデコッキング・レバーとマグ・リリース、スライド・ストップの位置が近いので、これらを混同しやすいことだ。
例えば、初心者の多くが全弾発射した後、MK25のスライドが、ホールド・オープンしているのに、わざわざ、また、マガジン・リリースを押さずに、スライド・ストップを下げてしまうという、操作ミスを起こす。実射時にアドレナリンが高まると、軽い度忘れ状態を作り上げ、間違った操作をさせる為だ。
更に、海外の射撃現場でタクティカル・グラブを使って撃つ人も多い。グラブは汗かきの人や銃のリコイルから手の平を守るのに役立つが、意外に弊害も多い。それはマガジンへの弾の装弾作業が殆どできないのと、指のリーチが短くなるので、スムースな銃の操作が出来なくなることだ。また、トリガーを正確に絞ることが難しく、同時に左手のグリップも甘くなるので命中率も落ちてしまう。
また、グラブの厚いパットが9㎜クラスのショート・リコイルの作動を相殺してジャムを起こしやすくなることは意外に知られていない。何故ならば、MK25系は強装弾に対応する為に、当初から、リコイル・スプリングのテンションが高く設定されているからだ。実際、米国の射撃コンペティションを見てもグラブをして撃つシューターが少ないことを見れば分かるだろう。もし、持参されるとするならば、分厚いタクティカル用ではなく、ゴルフ用等の薄いグラブがお勧めだ。
MK25のトリガーもM9同様にリーチが長いので、ドライ・ファイアでトリガー・フィーリングを確認したほうが良いだろう。MK25の3ドット・サイトは、ブルズアイ・ターゲットを撃つのは苦手であるが、シルエット(人型)を撃つ際には、フロントをヘッドに被せて撃てば、いい感じでバイタルゾーン(致死域)へ入る。MK25も精度が良い銃であるので、25mで150㎜位に纏めれば、中級と言える。
次回は実銃M1A(M-14)について語ります。
キャプテン中井(きゃぷてんなかい)
元陸上自衛官 レンジャー資格保有。NRAインストラクター、レンジ・セフティ・オフィサー、渡米歴26年。
著書:GunProfessional「撃たずに語るな」、「世界の銃最強ランキング 」学研