実銃レビュー/Springfield M1A(M-14)

海兵隊とライフル

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少し古い映画になるが、スタンリー・キューブリックの映画「フルメタル・ジャケット」での海兵隊の新兵教育シーンは、ハートマン軍曹役のリー・アーメイの迫力の演技も手伝って、独特の迫力を醸し出していた。
劇中の過酷な訓練シーンにも出来てきたが、海兵隊に限らず、ライフルを彼女の様に大切に扱うことは、未だに何処の軍隊でも鉄則である。その点で、訓練中に気が触れたレナードが自分のM14に静かに語りかけたことは、演出上もそれを良く理解していると思った。

また、彼の射撃の腕前の良さは、生活能力に欠ける人の特徴であることも、実際の軍隊でも良く見られる現象だ。特にレナードの様な巨漢が.30口径ライフルを撃つと抜群の精度を発揮することは、物理的にも理に適っている。つまり、人間は銃の発射台に過ぎないからだ。

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3-9X42スコープを搭載しているので100m先の野球ボールを充分狙える。

Springfield M1A1 (M-14)
口径:7.62x51mm(.308Win) 銃身長:559mm R/4
装弾数:20+1発 全長:1125㎜
重量:4300g 作動方式:ガス・オペレーション(ロング・ピストン)
100mの平均グループ:75mm (M80 Fedral 149gr.)

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スプリング・フィールド製よりもARMS製のマウントの方が低位置なので使い易い。

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U.S.RIFLEの刻印は、かつて米軍正式銃であったことを誇示している。

M14とM1A

M14系は1936年に採用されたM1ガランドを改良したものなので、ライフルのベースは既に80年前の代物である。しかし、このM1Aはリビルト(再生品)では無く、今もスプリング・フィールド社で製造されている、新品のライフルである。

当然、M1ガランドとの共通の部品やパーツも多く、弾も.30-06から7.62×51mmへケース長がスケール・ダウンしているが、エネルギーや射程とも、ほぼ拮抗するパワーを持つ。

M14系は現代に通用する程、精度が高いという印象を持つが、それは、後述したい。このM1AはM14の民間バージョン(セミ・オート・バージョン)であるので、フル・オート機能は省かれている。もっとも、7.62mmをフル・オートで撃てば50m以上の距離ならば2発目以降が殆どが無駄になるので、実戦ではセミ・オートで速射した方が有効であることは良く知られている。

バトル・ライフルとしての地位を築いたM1Aであるが、2001年からの中東戦争で、その性能が見直され、カービンやEBRバージョン等に改造されて各軍でも採用されている。
M1Aの良し悪しの序列であるが、

 

M1A(M-14)の魅力
・800m地点でも依然、5.56mmの300mと同等のエネルギーを持つ。
・400m以内では大体、2.5MOA前後をキープできる。
・スコープ用のベースを無改造で装着できる。
・ガス圧作動なので、作動率が高い。
・ハリス系バイポットをストックに直接、実装できる。

M1A(M-14)問題点
・マニュアル・セフティの位置が使い辛い。
・マガジン・チェンジにコツを要する。
・トリガープルが重すぎる。(改良パーツが少ない。)
・スコープ・ベースの位置が高すぎる。
・ボア・クリーニングをチャンバー側から行えない。

等が挙げられる。

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操作系のネックは、このセフティとマガジンの脱着である。トリガーの重さはM1ガランド時代から踏襲されている。

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スタンダードなウォールナット・ストックとスチールのバット・プレート。

M14の未来と復活のシナリオ

中東戦争以降にM14系が見直されたのは、その精度の高さと信じれているが、M14系は精度ではM16系(フルサイズ)に僅かに劣る。つまり、軍がM14求めたのは、精度では無く、500m以上の中距離におけるパワーである。1968年、ベトナム戦のテト攻勢時、海兵隊はフエの戦いでも同じ経験をしている。

現在では、7.62mmを中距離で撃つならば、わざわざ、重いM14やM21を使うよりも、リュングマン式のMk.11(SR25)系を使った方が、軽くて精度や操作性が格段に高いが、SR25系の納入価格はM14系の3倍を超えるので、この辺りの予算の関係も無視できなくなる。

つまり、M14系は、現在、EBR等の改修によって延命されているが、将来的に実戦で使われケースも少なくなるのは必然かも知れない。先にも挙げた様に、7.62X51mmを使うなら、SR25系でなくとも、他社のAR10系を投入する方が性能的にも勝るからだ。

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最近のM1Aにはバイヨネット・ラグ(着剣装置)が省かれている。着剣して撃つと弾着が大きく下がるので、ライフルマンには無用の長物。

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M1A(左)と改修されたMK14 EBR(右)。どちらも、ベースは同じである。

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レンジのM1A。100mではスチールを撃つので、弾着がリアル・タイムで分かる。

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M1Aの100mでの平均的な弾着。(1マスが1インチ平方)

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M14系のマグ・チェンジが素早く出来ればプロだ。

M1Aの実射

まず、M1Aの実射の前に、7.62mm系の射撃には正確なボディ・ポジション(射撃姿勢)をしっかり習った方が良い。やはり、このクラスの銃は5.56mmに比べてリコイル(反動)が強いので、発射毎にポジションが変わると、弾着も変わり易いからだ。特に大口径の射撃では発射後もスコープやサイトから目を離さないで、フォロー・スルー(残心)を決めることも必要だ。

また、M1Aのトリガーは基本的に1ステージであり、AR系に比べても重いので、慎重に引く必要がある。発射時のリコイルで肩が少し痛くなるが、同じ口径をボルト・アクションを撃つよりもマイルドに感じる。M1Aの場合は、100mで100mm以内に纏めれば、まあ合格だ。16インチのソコムや18インチのスカウトを撃つ場合は、軽いM80では弾着が安定しないので、.308Winの168gr.を使いたい。

現在では、軍用ライフルの主流は殆どが、5.56mmであるが、海外の射撃では、是非、M1A系を含む7.62mmのバトル・ライフルの迫力の実射も体験してほしい。

次回は実銃M686(.357Mag)について語ります。

キャプテン中井(きゃぷてんなかい)
元陸上自衛官 レンジャー資格保有。NRAインストラクター、レンジ・セフティ・オフィサー、渡米歴26年。
著書:GunProfessional「撃たずに語るな」、「世界の銃最強ランキング 」学研