実銃レビュー/S&W M686Plus Talo Model

実銃ハンドガンの精度

海外で射撃をする際には、色々な銃を様々な距離で撃つことになると思う。銃には自分が狙ったターゲットへ命中させる目的があるが、その目標をどのレベルに置くのかは意見が大きく分かれるところだ。

銃の性能にも左右されるが、殆どの汎用ハンドガンなら、ベンチ(固定状態)から撃てば25mで100mmを切る性能を持っている。一般的なスタンディング・ポジションでは人為的な偏差が出ることを前提にしても、25mで250mm以内、10mならば、100mm以内に集弾させての実弾射撃と言える。

実は、150年前の黒色火薬を使用する前装式ハンドガン(ライフリング付)でも、この程度に集弾するし、性能の良いエア・ソフトガンでもこの精度が出せるだろう。実銃の強烈なリコイルや発射音に惑わされずに、銃の性能を引き出すかは、シューターの腕次第ということになる。

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S&W M686 Plus (Talo Model)
口径:.357Mag 銃身長:76mm 装弾数:7 発  全長:203mm
重量:1,043g  作動方式:シングル(SA)&ダブルアクション(DA)
25m の平均グループ:75mm (SA)

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ツアーでも一番多く使ったリボルバーがこのM686だ。

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銃身長3インチのM686。Taloの意味は各メーカーの銃をアレンジ(カスタム)する販売店の名前。

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昔に比べて.357 MAGNUMの刻印がやたらと大きくなったので分かり易い。

パイソンを超えたロング・セラー

現在、S&W社はオートやAR系を主体としたM&Pシリーズをメインに売り出しているが、同時にクラシック・シリーズと銘打った往年のリボルバー・シリーズもラインナップに加えている。

リボルバーの名銃と言えば、既に生産中止されたコルト社のパイソンが知名度が高いが、我々、射的屋から言わせれば、断然、このM686 (M568)シリーズに軍配があがる。実際、パイソンが現役で活躍していた80年代のPPC (Police Pistol Combat)マッチでも殆どのシューターがM686を使用していたことを見れば分かる。まず、射的屋目線で見てM686の魅力と問題点を挙げてみた。

M686の魅力
・SA射撃ではオートに勝る精度を出せる。(4インチ銃身以上)
・銃口の先まで下に伸びたフル・ラグによるリコイルの軽減。
・.357Magの連続射撃にも耐えるLフレームとヨーク部。
・リアサイトがアジャスト式。
・ジャムの心配がない。

M686の問題点
・トリガー・ストップ・スクリューが緩みやすい。(①)
・①の影響でメインスプリングが緩み、DA時にミス・ファイアを発生させる。
・フレーム部のメンテナンスに手間が掛かる。
・弾頭重量による弾着差が大きい。
・2000年以降はSAのトリガープルを重めに設定。

等が挙げられる。

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このモデルは7連発である。6連発に慣れていると調子が狂う…。

.357Magはレンジの練習用ではない。

ハンドガン射撃の初心者が、25m先のターゲットのど真ん中を撃ちぬくには。このM686を含むリボルバーをSAで撃つのが一番なのだ。オートの場合は、トリガーの遊びもあるので、初心者には敷居が高いと言える。

勿論、精度はコルト・パイソンの独壇場だったが、高価な上、強度的にも脆いので、プロが使うには脆弱すぎる銃だ。また、パイソンや人気のKフレームのM19(M66)で.357Magを撃つ人は多いが、銃のヨークとシリンダーへの負担が掛かるので、お勧めが出来ない。車に例えるなら、4気筒のカローラに300馬力のエンジンを搭載した様なもので、いずれ銃のどこかにダメージを与えてしまう。

このタフなLフレームのM686でさえ.357Magを50発も連続発射すると、手が痺れてくる。.38Splの3倍のエネルギーを持つ.357Magはあくまでも、ここ一番でのディフェンス用であるのだ。もし、単にリボルバーのリコイルを楽しみたいなら、小さな銃で撃たずに.44Mag辺りを撃てば良い。

ちなみに、リボルバーには.357Magが撃てない銃もあるが、その銃身には、.38Splの刻印しかなく、決して.357Magの実包を入れることが出来ない。

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M686系はこのシリンダーとそれを支えるヨークの強度はクラス最強だ。

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アジャスト式リアサイトは精密な射撃には不可欠であるが、この3インチモデルでは射撃用としては、少し心許ない。

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アクション部分は、暴発を防ぐセフティ・バーが追加されて以来、トリガー・プルも重く設定している。最近は、告訴ケースも多いせいか、素人向けに安全を優先させる傾向にある。

M686の実射とコツ

最近は、観光射撃の人気がオートに集中しているので、リボルバーを撃つ機会が少なくなったかも知れない。しかし、リボルバーのグリップ方法はオートとは違うこと位は習った方が良いだろう。

怖がらせる訳ではないが、実際、オートと同じグリップ方法で左手を前に出して撃ってしまい、シリンダーギャップから噴き出たガスとコッパー(銅)片で隣の人に怪我をさせたり、左手に怪我を負う事故が全米でも減らないからだ。.38Splや.357Magなら、ともかく、世界一を自慢するS&W500や460マグナムならば、親指を切断する危険性も高い。
リボルバーは構造上、35000PSI(銃口内圧)辺りが限界なので、上記に挙げた50000PSIを超えるリボルバーには大きなリスクを孕んでいるのだ。

話は、それてしまったが、勿論、最初はSA、DA共にドライ・ファイアを行ってから射撃に臨むと良いだろう。DAの射撃時には、発射寸前にシリンダーのラッチがロックする音が聞こえるので、そのタイミングでトリガーを絞ると当てやすい。

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ジャムの無い、シンプル設計のリボルバーもシリンダーギャップの問題を抱えるが、.357Mag程度ならば、大したことは無い。

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それでもオートと同じグリップ方法だと危険だ。左手の握り方は気を付けて欲しい。

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.38splでも158gr.なら十分な反動を味わえる。

リボルバーは銃身長(照準線長)の影響で集弾が変わるが、2.5-3インチモデルなら25mで200mm、4-6 インチモデルなら、150mm以下に当てて行きたい。

次回は10/22 Tacticalについて語ります。

キャプテン中井(きゃぷてんなかい)
元陸上自衛官 レンジャー資格保有。NRAインストラクター、レンジ・セフティ・オフィサー、渡米歴26年。
著書:GunProfessional「撃たずに語るな」、「世界の銃最強ランキング 」学研